小泉:監督は現場におけるカリスマでなければいけなくて、そのカリスマ性を何で発揮するかというのはそれぞれのスタンスで、いろんな引っ張り方があると思うんです。その中で僕は割りといろんな人の意見を聞いて、一番いいと思うものを選んでいくというやり方なんですよね。自分よりいい意見が出れば、それを迷いなく採用する。もちろんそれはよりよいものを作るためなんですが、みんなの中のベストを引き出したいというのもあるんですよ。僕の映画に関わってくれる人が、その時持てる力を全部出し切って、「小泉監督と作ったあの映画が俺のキャリア至上最高傑作」と、何年後かに振り返って言ってもらえるような、そして小泉組で叩き出したその自己ベストを、また次の小泉組で更新してもらえるような、常にそういう作品作りをしていきたいと思ってるんです。
巣立:それは絶対ですよね。
小泉:例えばベテランのスタッフであっても、何かさらに新しいことに挑戦できた作品であって欲しいなと。「今までやりたいと思ってやってないことはないの? それやろうよ!」っていうことをやってもらいたいんです。僕らも年齢を重ねてきたとは言え、映画界では割りと若いほうなので、ルーティンじゃない何かで次のステージに行きたいし、行ってもらいたいんですよね。そうやってみんなで成長していく映画づくりをしたいなと。今回の『ちはやふる』は、ある程度それができたのかなと思ってます。
巣立:うちの組は決まりがあるようでないので、みんなで意見を言い合ってやることができるんですよね。逆に言うと、決まりがないぶんそのときそのときで対応しないといけなくなっちゃう。それはそれで勉強になるし、作品の味にもなるというか...。決まりがあったほうがたぶんラクなんですけど、ないからこそ、何かやってくれるだろうっていう期待感も持って臨める。それも若い組ならではで、この組だからこそかもしれないですね。
小泉:今回は作品として若い勢いが大事だっていうのもあったんですけど、みんなの意見を取り入れて新しいことをやっていくというスタンスはずっと変わらないと思いますね。監督としてもらったチャンスを、ほかの人にも広げていきたいというのがあるんです。
巣立:若いスタッフにチャンスを作って、その中でいい仕事をして自信を持ってもらいたいというのは大きいですよね。この業界は、若手が少ないですから(笑)。
小泉:それに僕らも永遠に若いわけじゃないので(笑)。こういう青春ものや恋愛もの以外にもチャレンジしていきたいですね。次のトップランナーにならないといけないので。
巣立:先輩たちを越えて超えていかないと。ROBOTの映画で言えば、本広さん、山崎(貴)さん、羽住(英一郎)さんという皆さんいらっしゃって、そこの壁ってものすごく大きいんですよ。僕もそこで育ててもらってきたんですけど、先輩たちをまず超えるというか、先輩たちとはまた違うものを切り開いていかないといけない。常に楽しみながら、チャレンジは忘れずにやっていきたいと思います。
小泉 徳宏 (こいずみ のりひろ)
1980年生まれ。映画監督。2003年ROBOT入社、『タイヨウのうた』(06年)で劇場長編監督デビュー。主な作品に『ガチ☆ボーイ』(08 年)、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(13年)など。
巣立 恭平 (すだて きょうへい)
1979年生まれ。映画プロデューサー。2011年ROBOT入社。『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(13年)、『幕が上がる』(15年)でラインプロデューサーを経て、本作『ちはやふる』が劇場長編初プロデュースとなる。
Text: 渡辺 水央 / Photo: 石井 健(ポートレート)
掲載日 : 2016.2.1
Text: 渡辺 水央 / Photo: 石井 健(ポートレート)