小泉: 今回の『ちはやふる』は前回の『カノジョは嘘を愛しすぎてる』と同じメインスタッフでやらせてもらっていて、それは今までになかったことですね。これまではあまり自分の組というものを作らずに、毎回違うスタッフとやっていたんですよ。それというのも僕は下積みがそんなになかったので、いろんな人と仕事をすることで経験を積みたかったんです。ただ、僕も年齢的に当初は若手と呼ばれていたのがそんなに若手でもなくなってきて、そろそろ組と呼ばれるものを意識しながらものづくりしてもいいのかなと。しかも前後編で、競技かるたという今まで扱ったことのないものを描く作品ということで、スタッフに掛かる負担も大きくなる。コミュニケーションをスムーズに取って、クリエイティビティに力を注げる仕組みというのも必要だと思ったんです。そういう意味でも「組」を初めて意識した作品になりました。
巣立: 監督とは『カノ嘘』でも一緒にやらせてもらっていて、そのときから部署の隔たりなく、末端のスタッフの子から監督までが平等にやれる組だなっていう印象だったんですよ。僕自身、アットホームな組を作るということがなにより大事だと思っているので、一致団結しているチームで臨んで、今回もそういう現場にできたらというのはありましたね。ファミリー感というのは鉄則。特に若い俳優さんが多かったので、みんなが遠慮しないでキャッチボールをできる環境を作るというところを目指したいなと。今回、キャストだけじゃなくスタッフも若い人ばかりで、撮影・照明・録音、美術以外はほとんど僕らと同世代なんですよ。そこは逆にチャレンジでもあって、若い人たちでものづくりができたら、また何か新しいものが生まれるんじゃないかという思いもありましたね。
小泉: 『カノ嘘』のときはまだ変な緊張みたいなものがあったんですけど、今回はちょっと余裕をもって臨めた気はします。やっぱり前作と同じスタッフで、コミュニケーションがスムーズに取れたことは大きかったですね。。あと、脚本も納得いくまで自分で書かせてもらったので、そこで自信を持って臨めたっていうのもありました。今まではとにかく撮影が終わると一週間くらい原因不明の熱で倒れて廃人のようになっていたんですよ(笑)。『カノ嘘』くらいからそれがなくなってきて、今回はやり切った心地よさみたいなものも素直に感じられて。やっぱり経験を積んで来たぶん、余裕が出てきたっていうのもあると思います。今までは目の前のことしか見えてなくて視野も狭かったのが、だんだん広くなってきたんでしょうね。