小泉: 高校生たちを描くのに当たって、20代半ばくらいの子たちでやるのは止めようねっていう話をまず最初にしたんですよね。10代の役者をキャスティングするのって、すごく勇気がいるんですよ。役者としての実力も世間の認知度も人間としての成熟度もまだまだ安定してないので、演技指導にそれなりに手がかかるし、映画が公開される頃にその役者がどういう立ち位置になっているか予測が立てられない。その点、20代半ばくらいの俳優さんだと、それぞれいろんな意味で安心感も安定感もあるんですよね。ただ、この作品に関しては、20代半ばくらいの子たちに制服を着させて高校生ですっていうのは違う。できれば、原作の実年齢に近い子たちでやりたいなって思ったんです。彼らの役者としての完成度はまだこれからだとしても、そこも含めて絵にしたいなと。技術的なことを言えばまだまだなのかもしれないけれど、彼らにしか出せない勢いや情熱みたいなものを切り取る映画にしようと。
巣立: 僕もそこは絶対外したくない部分でしたね。ただ、これまでに映画では土壌がない競技かるたを描くっていうことでも、若い子たちと一緒にやるっていうことでも、正直、本当に大丈夫かなっていう不安も最初はあって……。
小泉: 主演の広瀬すずさんにしても今でこそ時の人ですけど、企画当時はちょっとすごい子が出てきたぞっていうくらいの感じで、まだまだ有名ではなかったんですよね。
巣立: そこで勝負をして、エンタメにしていかないといけないっていう。ただ、みんなが挑戦していない、今まで土壌がないところをやらせてもらっているわけで、そういう意味では楽しかったですけどね。安牌で置きに行っていない。しかもこれだけ大きな規模の作品でそれをやらせていただけて、ありがたいなと。僕自身は、監督に頼りっぱなしなんですけどね(笑)。不安でありながらも行けるって思ったのは、監督が若い俳優さんの情熱をうまく表現して演出できる人だからこそなんですよ。『カノ嘘』の大原櫻子さんでそれが分かっていたので、やれるだろうって思えたんですよね。
巣立: 俳優さんたちもすぐになじんで、3、4日目くらいからはもういい意味で全然遠慮なくやってましたね。そこも若いからこそなんだろうなと思いました。
小泉: かるたの練習も相当やってましたからね。逆に彼らのほうから「今日は練習ないんですか?」っていう問い合わせが来たくらいで(笑)。
巣立: 自分だけ練習が少ないと、「なんで僕だけないんですか!?」って。先生はひとりしかいないからね、順番だからね、と(笑)。ひとりがうまいと、そこに追いつこうとするんですよね。その相乗効果がすごかった。
小泉: そういう感覚もその年頃ならではですね。まさに部活の話ではあるんですけど、部活感みたいなものが自然と出たなと。いい意味でも悪い意味でも、ザ・仕事じゃない何かが出たというか。ただ彼らは10代でありながらとんでもなくプロ意識が高いんです。
巣立: そうですね。逆に若いからこそ高いかもしれないですね。オンオフの切り替えがすごかったです。本番前まではすごいじゃれ合っているんですけど、本番入ると瞬時に研ぎ澄まされて、本気で挑んできて、本気で戦ってくるんですよ。そこには驚きました。
小泉: 自分が若い頃は全然こんなじゃなかったなって。当然、僕の10代の頃なんて飛び越えていて、次元が違う。もし自分がこの年代で彼らと同じクラスだったとしても、見えている世界はまるで違うんだろうなっていうくらい(笑)。