組のちから
第8回 西田組

ROBOT社内で、作品を完成させるために日々さまざまに結成される“組”に迫る連載インタビュー。

第8回を迎える今回は、11月18日に映画監督2作目『泥棒役者』が公開される西田征史監督と、デビュー作に続いてプロデュースを手掛ける明石直弓の制作陣による“組”のちからに迫ります。

若いパワーにあふれる『ガチ☆ボーイ』がつないだ縁

西田組-Photo

プロフィール
西田 征史(にしだ まさふみ)
東京都出身。脚本家、演出家、映画監督。主な作品に、舞台『泥棒役者』(2006年/作・演出)、映画『ガチ☆ボーイ』(2008年/脚本・俳優)、オリジナルアニメ『TIGER & BUNNY』(2011年/シリーズ構成・脚本)、舞台『BOB』(2012年/作・演出)、映画『小野寺の弟・小野寺の姉』(2014/監督・脚本)、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(2016年/脚本)など多数。
長編映画第2作『泥棒役者』(監督・脚本)が2017年11月18日より全国ロードショーとなる。

明石 直弓(あかし なおみ)
宮城県出身。映画プロデューサー、キャスティング。大学卒業後、徳間ジャパンに入社。その半年後、テレビドラマ制作会社に出向し、ドラマ制作に携わる。2003年よりフリーのキャスティングとして活動。2008年よりROBOT映画部所属。映画『ガチ☆ボーイ』(2008年)、映画『おっぱいバレー』(2009年)、映画『百瀬、こっちを向いて。』(2014年)、『小野寺の弟・小野寺の姉』(2014年)、映画『紙の月』(2014年)、映画『暗黒女子』(2017年)などを手がける。西田監督作品『泥棒役者』は氏と二度目のタッグとなる。

理想的な映画作りの裏にあったのは、理想的な組作り。映画監督デビュー作『小野寺の弟・小野寺の姉』と2作目となる最新作『泥棒役者』でタッグを組んでいる、西田征史監督とROBOT映画部・明石直弓プロデューサー。自分たちのオリジナルにこだわり続け、それをまさに理想的な形で送り出している両者が初めて顔を合わせたのはこれよりさらに前、2008年公開『ガチ☆ボーイ』(小泉徳宏監督)の制作時。ただ、そんなふたりの「組」としての出会いは監督とプロデューサーではなく、最初は俳優とキャスティングだったというのは面白いところ。

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西田:初めてお会いしたのは、もう10年以上前になるんですよね?

明石:そのとき私はまだキャスティングの仕事をしていて、役者として舞台に出ていらした西田さんに出演の方のオファーをしたんです。でも私の力が及ばず、キャスティングすることが出来なかったんです。一方で『ガチ☆ボーイ』をプロデュースするに当たって、脚本家さんを探していたんですよ。そうしたら西田さんの事務所の方から、「脚本も書くんです」という話をうかがって。書かれた脚本を読んだことはなかったんですが、舞台を手掛けられているのは知っていて、もともと興味のある方だったので「一緒にやりませんか?」ってお願いしたのが最初ですね。

西田:それで脚本のコンペに参加させていただいて。『ガチ☆ボーイ』はもともと舞台作品だったので、舞台映像をどう映画にするべきかを自分なりに考えて、プロットを提出させていただいたんです。そこから2カ月くらいですか? 夜中に突然、「選ばれました!」と連絡をいただいて。今でも覚えてるんですが、三宿でご飯を食べていたら電話が鳴ったんです(笑)。自分の人生が動き出した瞬間でしたね。

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明石:『ガチ☆ボーイ』は小泉監督の2作目をどうするかという中で動き出した作品で(デビュー作は2006年の『タイヨウのうた』)、学生プロレスのお話ということもあり、若い人たちでフレッシュな作品を作れたらというのがあったんですよ。主演の佐藤隆太くんと小泉監督が当時20代の同い年だったので、「勢い」を望めそうだと思いました。また、私もこれが初プロデュース作品だったので、一緒に頑張れる人とやりたいなと思っていたんです。西田さんは「やるならこういうものにしたい」というビジョンがはっきりあって、それがこの作品にも合っていて。脚本家として、出演者のオーディションにも参加していただいたんですよね。

西田:審査するだけかと思っていたら、なぜか役者としても出させていただくことになって(笑)。全然出る予定ではなかったんですが、スタッフもキャストもみんな仲間のようになっていった中で、監督が「出ませんか?」と。今、一緒に映画を作っているメインスタッフはほとんど『ガチ☆ボーイ』のときに出会った方たちで、脚本だけの参加ではたぶんここまでの付き合いにはならなかったと思いますね。本当にあの作品のひとつひとつが今につながっているなと。

西田組-Photo

明石:ちゃんとあそこから繋げているってすごいですよね。スタッフもそうですけど、隆太くんとも、向井(理)くんともちゃんと繋がっている。

西田:肌が合う人たちだったんでしょうね。向井くんとはロケ先のホテルで相部屋になって、2週間くらい寝食を共にして。振り返ると、不思議な時間でした(笑)。

両者にとって出発点となった『ガチ☆ボーイ』。そのときからお互いの印象は変わらないと語るが、仕事観や人間力などそれぞれの印象が、ふたりを結び付ける信頼の絆にもなっている。

西田:明石さんはよく「作品は私の赤ちゃん」とおっしゃるんですが、本当に作品を大事にしてくれる方という印象で、それは今も昔も変わらないです。間違っているものは間違っていると言うけれど、作品の肝を一番大事に考えてくれている。それは『ガチ☆ボーイ』のときから感じていましたし、今、監督として一緒にもの作りをさせてもらっていても感じます。

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明石:西田さんはとにかく常にビジョンがはっきりしているんですよ。書くものもそうですし、未来の自分の目標に向かって今はこういうふうにやって、こういうふうに進んでいくんだって、もの凄くハッキリしている。『ガチ☆ボーイ』で出会った頃から、いずれは映画を撮りたいというお話をされていて、ちゃんとステップを踏んで進んでいこうとしているんだなと。やりたいことが明確だから、へんな駆け引きもせず、一緒にやれることをやっていきましょうって思えるんですよね。そのうえ、すごく人を惹きつける魅力がある。西田組のスタッフをやった人たちは、絶対にもう一回やりたいって言います。そういう吸引力がある人ですね。

西田:脚本家としてどうなるかもまだ分からないときだったんですが、いつかは撮れたらいいなという思いはあったのかもしれないですね。自分の中にあったのは、とにかくまずお話を作りたいという思いなんです。でもそれが結局、自分のお話を自分で撮るということにつながっているんですよね。