ROBOTのディレクターがPMの本音に迫る、第5回「組のちから」。
ディレクター森清が更に質問を投げかける。「もし大学の後輩がこの仕事やりたいって言って来たら勧める?」
さて、この問いにPM陣はなんと答える?
橘川:簡単には勧めないですね。適当にマスコミがいいですっていう人には勧められない。
実際僕がそうだったんですが、まだ2年目なのに大きな予算を台なしにしかねない仕事も任される。ひとつの小さなミスで大きな仕事を一瞬で消してしまうことになりかねない。そういう責任がある仕事です。
一方で真逆の意見も。
五十嵐:映像への興味さえあれば、PMは誰でもできるんじゃないかなって思ってるんですよ。ただ、勧めはしないです。だって辛いから(笑)。寝られないし、怒られるし。でも、僕自身はそれを辛いと思わないタイプなんですよね。深く考えなくて、ポジティブで軽い(笑)。グッと入り込んでしまって、すべてを一生懸命やろうとしたら絶対成り立たないと思います。どこかしらふわっとしたところがある人じゃないと、難しいかもしれないですね。
森清:みんな誰にもこの仕事を勧めない(笑)
じゃあさ、なんでみんなPMをやってるの?ノムノム(野村)は?
野村:えっと、映像が好きだから…かな。
一同:うわぁ…。(全員失笑)
森清:それだけじゃ、続けらんないでしょこの仕事。この取材は社内でやってるだけなんだから、もっと本音で答えてよ。何で続けてこれたの?
野村:うーん…。怖いもの見たさみたいな部分ですかね…。こんな人がいるんだとか、こんなに大変な現場があるんだとか。最近やっと全体を動かしているんだなと心から思えるようになってきて、僕が止まってると現場も止まってしまうし、年次が上になってくるとプロデューサーが任せてくれることも多いので、そこに自分の考え方を反映できるようになって、やり甲斐を感じられるようになってきましたけど。
森清:ナックは?(中平に対して)
中平:…やっぱり大変だった仕事が完成したときですかね。それを見てるときや、一緒に作った人たちと“いいものできましたね”って言ってるときは気持ちいいです。なので、2カ月に1回くらい?(笑)。
みんなでものづくりしてることは楽しいし、幸せなことだなって思ってはいます。でも、PMの延長上にプロデューサーになるという目標が一応あるじゃないですか。そこに対してはまだはっきりと見えていないですね。
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PMという仕事について、きちんと言語化できている人も、まだ言語化できていない人も、「自分にしかできない」という自負はある。森清が覗いてみたかった、飲み会でも聞けない、PMたちの本音。
最後に、ROBOTという会社について森清に語ってもらった。
森清:僕から見ると、ROBOTはいろんな可能性の余地を残しておいてくれる会社です。人それぞれの興味が、ほかの人の興味になった瞬間に形になるスピードはすごく早い。がんじがらめに何をしろ、これはやるなっとは言わないし、チャンスが多い会社でもあると思います。やらせてもらえないほうが、言い訳が利くけど、やらせてもらえるからにはしっかりと形を残していかなければいけない。そういう意味では自由な空気の中にも緊張感がしっかりある会社だと思います。 特にPMは、PMだけの仕事を続けることは難しくて、ある段階でプロデューサーを目指さなくはいけない。その辺のことって、一緒に仕事をしながら、実は気になっていることですね。
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CM 制作はいくつものメンバーが短期間に組成されるのが特徴であることは冒頭に記したとおり。しかし「森清組」と題し、森清監督とPM たちの言葉から見えてきたものは、単に作品だけを作る関係性ではなく、先輩、後輩として同じ会社で業務をともにしながら、さらには同じ業界の同じ現場で働く同志として力を尽くし合う、密接な関係の「組」なのだということ。それぞれが持てる力を最大限に発揮しながら、その中で育てられ、一方で支えていく。 仲間たちと目の前のものに励み楽しみながら、学んで成長していく一期一会の場。映画とも他の現場ともまた違う「組」という意味では、「森清組」はまさに学校のクラスのような「組」でもあるのかもしれない。もちろんユニークで温かくも厳しいその担任は、森清その人だ。
Text: 渡辺 水央 / Photo: 石井 健(ポートレート)
掲載日 : 2016.6.7
Text: 渡辺 水央 / Photo: 石井 健(ポートレート)